第三者のためにする契約

第三者のためにする契約

第三者のためにする契約というのは、生命保険のケースを考えてみれば分かりやすいでしょう。
生命保険の場合、Aを生命保険会社として、Bを契約した被保険者、Cを保険金の受取人としてみましょう。
BはAに保険料を支払っています。そしてBにもしものことがあった場合にはAはCに保険金を支払うのが生命保険です。これが第三者のためにする契約です。この構造を不動産売買にも応用しようとするものです。

売主A、中間者B、買主Cとします。まずAB 間で所有権移転・引渡しをB が指定する第三者C に対して行うことを目的とする「第三者のためにする契約」を締結します。(売買契約Ⅰ)また B が売買代金全額の支払いを行った後、Bに自動的に所有権が移転しないよう「買主への移転は自らを指定する明示の意思表示があったとき」とする特約を付けます(所有権留保特約)。
一方、BC間でA所有不動産をCに売却する売買契約を締結し、AがCに直接に所有権移転・引渡しを行う特約を行います。
上記によりCがBに売買代金全額の支払いをなしたとき A→C の所有権移転が完了します。その結果、中 間省略登記と同様の効果が結果的に発生することになるのです。
特約の内容を詳述すると以下のとおりとなります。

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売買契約Ⅰ(AはBに物件を売り渡し、BはAに代金を支払う)
1.所有権はAからBの指定するもの(この時点でCは特定していなくてもよい)に対して直接移転する。(第三者のためにする契約)

【特約条項例】
(所有権の移転先及び移転時期)
買主は、本物件の所有権の移転先となるもの(買主を含む)を指定するものとし、売主は、本物件の所有権を買主の指定する者に対し買主の指定及び売買代金の全額の支払いを条件として直接移転するものとします。

2.Bによる所有権の移転先の指定がない限り、売買代金完済後も所有権はBに移転せず、Aに留保される。(所有権留保特約) ★上記特約1を設ければ必ずしも必要な条項ではない。

【特約条項例】
(所有権留保)
売買代金全額を支払った後であっても、買主が買主自身を本物件の所有権の移転先に改めて書面をもって指定しない限り、買主に本物件の所有権は移転しないものとします。

3.Aは、Cの受益の意志表示(CがAに対してする移転と引渡しをしてほしい旨の意志表示のこと)の受 領をBに委託する。(本来CがAに対してする意思表示をBに対してすることに対するAB間の委任契 約) ★通常どおりCがAに対して受益の意志表示をする場合は必要な条項ではない。

【特約条項例】
(受益の意志表示の受領委託)
売主は、移転先に指定された者が売主に対してする「本物件の所有権の移転を受ける意志表示」の 受領権限を買主に与えます。

4.AはBの所有権移転債務(BがCに対して負う債務)の履行を引き受ける。(履行の引受け)

【特約条項例】
(買主の移転債務の履行の引受け)
買主以外の者に本物件の所有権を移転させるときは、売主は、買主がその者に対して負う所有権の 移転債務を履行するために、その者に本物件の所有権を直接移転するものとします。

売買契約Ⅱ(BはCにA所有の物件を売り渡し、CはBに代金を支払う)=他人物売買
1.Bが負う所有権移転義務はAが履行する(第三者の弁済)

【特約条項例】
(第三者の弁済)
本物件は、未だに登記名義人が所有しているので、本物件の所有権を移転する売主の義務について は売主が売買代金を受領した時に、その履行を引き受けた本物件の登記名義人である所有者が、買主 にその所有権を直接移転する方法で履行することとします。

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